GLASS BOTTLE STUDIES

第4回 ガラスびんの多様性を探る:いろ編

第4回となるガラスびん学では、「いろ」に迫っていきます。
加色技術の向上や幅の広がりから、商品の世界観を視覚的に伝える手段としてこだわりの効く表現のひとつ。また、色があることでガラスびんの中身の品質を守る機能性が備わることも。その裏側には何があるのでしょうか?

 

最初に製びん後の加工で色がつくのではなく、原料となるカレットの色がそのまま出ているガラスびんを見ていきましょう。
お酒のガラスびんに緑、青、濃茶の色が採用されているのは、中身の品質を保つために容器の外から差し込む紫外線をカットする意味があるのですよね。色が濃ければ濃いほど紫外線をカットして保存力が高まるものなんですか?

 

八百幸:遮光率の低い方から順に並べてくと…こうなります。左の水色ガラスびんがもっとも光を通しやすく、茶色が一番遮光する。

 

 

あれ、意外に黒の方が茶色より遮光率が低いんですね!

 

八百幸:黒の方が茶色より遮光率が低くなっています。色だけでなく、ガラスの厚みによっても遮光率は変わってくるのでその総合的なバランスですね。
ビールは酒類の中でも特に温度と紫外線の影響を受けやすく、日光臭と呼ばれる匂いが出て劣化が進んでしまいます。だから遮光率が高い茶色が採用されているんです。

 

波長の数値と色の濃さがそのまま比例関係にあるわけじゃないというのも面白いですね。

 

鵜澤:流通過程が今ほど整備されていなかった昔は、絶対に日光に当たらないような配慮ができなかったので、日本酒には一升びんに代表される茶色いガラスびんが採用されていたのだと思います。

 

 

味が繊細に変化するお酒こそ
保存性の高いガラスびんにぴったり”

次はこちら。ラベルは筆で手描きしたようなテクスチャーを感じる加工ですね。

 

八百幸:ガラスびんの印刷加工方法としては一般的なスクリーン印刷によるものです。多色印刷では使用できる色が7つあるのですが、ここで使っているのはピンク、白、茶色の3つ。部分的な版を何枚か重ね、通常は平面にしか適用できない印刷を曲面で表現できるよう工夫をしています。

 

こういった加工は日本では一般的なのでしょうか?

 

八百幸:海外では一般的なのですが、日本のガラスびん業界では事例が少ないです。技術力はあるのですが、コストも上がってくるので“プレミアム”な容器になっていきますね。

 

鵜澤:多色印刷はコストがかかってしまう加飾方法です。単一の商品ロットを考えると、商品の価格が上がり購入バランスが合わなくなるケースがあるため、なかなか踏み切りづらいかもしれません。

 

第3回ガラスびん学でもふれたとおり、技術ありきで考えるのでなく、やはりお酒などコストがかかっても許容範囲である商品で開拓されていく方法なのでしょう。

 

八百幸:飲料メーカーなど商品を作っているお客さんの要望が第一にあって、限りあるお金と時間に対してどのような選択肢を持ってベストな状態で答えるか。これがガラスびんメーカーのデザイナーの仕事として基本のきです。

 

お金と時間の制約の中で
いかに最良のガラスびんを表現するかが
ガラスびんデザイナーの基本中の基本”

この淡い色合いはかわいらしいですね。これも多色印刷ですか?

 

 

八百幸:これは「コーティング」という方法で、樹脂にガラスびんを浸けてコーティングしています。この3つは全て形状が一緒ですが、色で違いを出しています。光に照らした時にパールのような質感を出せるコーティング技術もあります。他にも吹き付ける“塗装”では単色だけでなく、グラデーションのように色のつきかたを変化できる場合もありますよ。
この緑色の2つのガラスびんは、左が透明ガラスに緑のコーティングを施したもの、右が緑色のカレットを原料としたガラスびん。コーティングしたガラスびんの口部分に色がついていないのは、製造工程でこの部分が機械に掛かるからです。

 

 

色のついたカレットを利用したガラスびんとコーティングして色をつけるガラスびん。見た目はほぼ一緒ですが、それぞれの方法を選択する理由はなんでしょうか?

 

八百幸:びん生地に直接色がつく場合だと、生産のタイミングを合わせる事や色味のバリエーションが限られる事、一定の生産量が求められます。コーティングの場合は、このような制約がないので透明びんがあれば希望する色味のびんを作れる事が特長と考えます。

 

確かに、同じガラスびんのかたちを作ってからあとでどんな色も着けられるとなると、融通が効いて作りやすいですね。

 

いっけん同じ見た目のガラスびんでも
表現方法は一つというわけではない”

 さまざまな要望や制約がある中で実現されるガラスびんのデザイン。一つの答えにたどり着くまでのプロセスも決して一つではなく、制約があるからこそそこにベストを尽くすガラスびんデザイナーの存在も忘れてはいけませんね。

次回、第5回ガラスびん学では、使い手の立場に寄り添ったガラスびんのデザインについて学んでいきます。