GLASS BOTTLE STUDIES

第5回 生活者に寄り添うガラス

第3回第4回ではガラスびんを主にデザインの観点から、その多様性をはじめ背景にある社会との関わり、ものとしての価値について考えることができました。

第5回ガラスびん学では、ここからさらにガラスの使い手である生活者に寄り添うガラスびんのあり方についてご紹介していきます。「ユニバーサルデザイン(使い手の文化・言語、年齢や性別の違いなど、あらゆる人が利用可能であることを目指したデザイン)」の概念は、ガラスびんにどのように現れているのでしょうか。その背景にあるものもあわせて知っていきましょう。

 

「UD(ユニバーサルデザイン)びん」。その代表格として今回「軽量びん」を持ってきていただいてますね。まずはこれについて詳しく教えてもらえますか。

 

後藤:そもそも「UDびん」というのは、生活者がそれをどう持つか、キャップをどう開け閉めするかなどの動作にまつわること、老若男女誰が使うか、商品の情報をどう伝えるかを解決するデザインが施されたもののことを指します。ちょっとくびれがついただけで「ここを持てば大丈夫」という安心感がある。特に女性や小さいこども、力の弱い方に向けて配慮されたデザインなどもそうですね。

その中でも「軽量びん」「超軽量びん」は現在多くのガラスメーカーが実践している、生活者の立場に寄り添って作られたものです。ガラスびんの容量と質量の関係を関数で求めた「軽量度指数(L値)」が存在し、これによって「軽量」「超軽量」と分類されています。

 

八百幸:1990年代後半から生活者の要望に応えるかたちで軽量びんを作る動きができました。牛乳を冷蔵庫で保存すると水滴がついてしまい、滑りやすくなり持ちにくいことを解決するために形と重量に改良を重ねました。

 

左手に持っているのが軽量化前の従来びん。右手に持っているのが40%軽量のUDびん(※実際のガラスびんを半分にカットしたサンプルです)

 

軽量びんとは、つまり薄さに耐えうる特殊なガラスを使っているということでしょうか?

 

鵜澤:いえ、使っている素材は通常のガラスびんと全く一緒です。技術が向上したから実現できていることなんです。
基本的にガラスは厚みがあればあるほど強いものとされています。ですが全体で厚みが均一ではなく、強度を維持するために箇所によって厚みが変わります。実用強度を保ったまま全体を薄くし、バランスが取れているのが超軽量びんです。

 

八百幸:例えばこのガラスびんは、見た目は同じですが片方は40パーセント軽量化しています。つまり、使用している素材の量も40パーセントカットできているというわけです。製造工程でも、資源として使うガラスの量を減らし、輸送面も負担が少なくなり環境に優しい。いいことづくしですね。

 

40パーセントという数字はすごい!実際にビフォーアフター両方持ち比べてみると、びっくりするほど軽い、これは本当にすごいことです。先ほど話に出た牛乳びん以外でも実践されている取り組みなんですか?

 

八百幸:お酒のびん、調味料のびん、ありとあらゆるガラスびんでこの動きはあります。3R(リサイクル、リユース、リデュース)の中でも「リデュース(発生抑制)」にあたる部分ですね。

 

そういえば、資源の分別や回収、再資源化・再利用について定められたリサイクル法が施行されたのが1991年、リサイクルシステムを促すきっかけとなった容器リサイクル法(容リ法)の施工が1995年。90年代に現在の資源回収にまつわる制度ができましたが、これは軽量びんの動きと関連していますか?

 

八百幸:製造者の需要と供給がマッチしたのだと思います。欧州などでは街角に回収ボックスやデポジット機が多く設置されているのをよく見ました。日本でもリユース・リサイクルのシステムは確立されていますが、ひとりひとりが日本より積極的な姿勢なのだなと感じました。日本ではこのようなかたち(資源回収)で独自に3Rに対してアプローチし進めていると考えます。

 

 

 

持続可能な未来に向かう動きが出始めた頃に
使い手の生活に寄り添った軽量びんも生まれた”

 

続いて、点字が刻まれたガラスびん。点字を容器につけるかつけないかの判断基準はあるのでしょうか?

 

 

鵜澤:これは商品をつくるメーカーが持っている、会社としての姿勢や思想ありきですね。このジャムのガラスびんは「ジャム」と点字が刻印されています。軽量化も図った、まさにUDびんのお手本のような存在だといえますね。

 

八百幸:ジャムだけでなく、日本酒やワインなどさまざまな分野の多くの商品に点字が刻印されています。多様な人たちが暮らす社会に対して、商品を作る側がどのような考えを持っているかが、こういったちょっとしたことに現れてくる。ガラスびんのデザイナーとしても各社さんのおもいを届けるお手伝いをできれば嬉しいですね。

 

ユニバーサルデザインを採用しているガラスびんには
商品の作り手の思想が現れている”

あらゆる状況にある人々、そして社会や環境にとって「やさしい」ということがどういうことかを考えさせられるきっかけになった「UDびん」。

ここでご紹介できたガラスびんはほんの一例です。この学びをきっかけに、自宅にあるガラスびんをすみずみまで観察して「隠れたユニバーサルデザイン」を探し出すもよし、商品のメーカーごとにどのような取り組みがされているか掘り下げてみるもよし。商品の作り手の思想を想像しながら、その背景に思いを馳せるきっかけになれたらこれ以上のことはありません。